「表が作れないのは能力の問題か」を考えてみる
「おい、○○くん、この表のデータおかしくないか?」、「ここ違うぞ、至急やり直しだ!」「なんでそんなに時間がかかるんだ!」などと叱咤激励?を受ける場面は多かれ少なかれどこの会社にもあるものだと思います。
弊社の経験では単純に「作業者のレベルが低いから表が作れない」というわけではない部分もあったりします。
今回は上司の方にも知ってもらいたいという点からこのことについて考えてみたいと思います。
Excelの「使い慣れ具合」もちろん大事だけど・・
上司から見ると簡単な集計さえできないと苛立つのは理解できなくもないですが、それを「作業者のスキルの問題」と一蹴するのはやや早計かもしれません。
例えば1日朝1時間と夕方1時間の計2時間だけExcelを使う業務があった場合、Excelを触る時間は1か月で約40時間、1年で500時間弱となります。これが入社3年目なら相当な時間をExcelに費やしていると言えます。
弊社の経験的には、3年間Excelを使い続けるとそれなりのことはできるスキルを身に着けていることがほんとどです。
だからこそ腹立たしくなるというのもあるかもしれません。しかしそれなりにExcelを使っているにも関わらず「表が作れない、遅い、間違っている」のは別の原因があるかもしれないという見方もできます。
今回は実際によく見かける「スキル以外の原因」を2点紹介します。
穴だらけのデータを元に作成する場合
弊社ではこのパターンをよく見かけます。Excelは表計算を得意とするソフトですが、そもそもの部分で「表にし難いデータを使って表を作る」ということを多く見かけます。
Excelと言えど表(集計)に適したデータ、適さないデータがあります。
「穴だらけ」とは単に空白が多いという意味ではなく、ここではセルに「予期しないデータが入っている」ことを含めています。(※だたし元データ自体としては成り立っている場合)
下記2点は簡単で大げさな例ですが、例えば1個目のこの表を「商品別にまとめる」というのは一般的なExcel関数を使う感覚では難しくなります。
1つのセルに複数の商品がカンマで区切られている(分割しないと関数が使いづらい)、No2の単価が合算されている(商品ごとの単価がほしい)等が挙げられます。
また例えば下記をクロス集計的に「商品ごとの受注確度一覧表」にする際に、数値があったり、文字があったり、時期で整合性取れてないデータがあったりで、(弊社が作業するならば)そもそも事前ルールを設けて運用自体の見直しも検討します。
このため作業者はこの「穴だらけ」の部分を補正しながら作成しなくてはなりません。口で言うのは簡単ですが、実際の作業になると神経使います。というのもそもそも「予期しない」部分がどこにあるのか分からないからです。
恐らく多くの場合、最後の表ができて上司に指摘されたり、あるいは時間を置いた後で見直して気づく形になります(なぜなら、作成時は予期していないからです)。そして修正作業は、その予期しない部分が(作成後の)表のどの部分に影響を与えているかを意識し続ける必要があるので、目に見えない作業範囲が広がります。
上記画像のように数件のデータをまとめるだけなら100%の精度で作成することはできても、それが100件、1000件になると作業前に元データのどこに問題があるかを把握するのは不可能に近いです。
こうした点を多く含む元データは「作業者のやり方に問題がある」のではなく、そもそも「元データの在り方に問題がある」という見方をする必要もあります。
下記は総務省 統計局の「港別 入港外航船舶・航空機数」データですが、このように印刷ベース(印刷できる状態)に仕上がっていると思われるフォーマット表のデータを活用するのも、通常の作業よりも難易度が増します。
例えば、Excel的には1つの塊り(データ群)であってほしいのが2列(赤枠)になっている、空白行、列があるので(邪魔して)オートフィルタ、ピボットがそのまま使えない、左のの塊りの上部には「総数」が含まれている(集計時には含めないようにしないといけない)、などが挙げられます。
過去の「イケてる」表を使い続ける場合
これは前任者などが作成した「フォーマット」や「マクロ」が固定化され、使い続けられている場合に起こります。
「当時は資産であったものが、今の業務スタイルにそぐわない、でもそのフォーマットに手動で変えていかないといけない」場合です。
本来なら現在の業務に合わせて変えていくべきだった点をそのままにしていたため、結果的に一部旧式に変えて作業をする場合もリスク高です。
弊社の知る事象としてよくあるのは、簡単な入力説明資料片手に「作業者は規則的に旧式に沿うように変えて入力するだけ」です。
このためエラー等の問題が起こっても解決できない状態となり、その場しのぎ的に最終結果だけ入力しなおす(上書く)などがあったりします。
業務というよりも「ある一定のExcel作業だけ」が属人的かつマニア級レベルで作成したフォーマット、マクロなどだとExcel上級レベルでも解決まで時間が必要になります。
この場合もこの業務(作業)プロセス自体を見直すことを検討する必要があります。
本当の業務は表の作成後に始まる!?
レポートや報告書、日報、月報などは作成すること自体が目的ではないはずです。
例えば、「その結果を見て、今後の戦略や動向をどのように考えるか」などにあるならば、Excelの作業自体にかける時間は極小でなければならないし、極端な話で言えば、結果さえ得られれば誰が作ってもよいということになります。
社員コストを効率的に使うには、Excelの学習だけでなく、むしろ企業への貢献度が高い業務へシフトする必要もあります。
弊社ではこのような企業様からのご依頼(データ入力代行)等も承っているために気づくことですが、一つの組織の中ではなかなか気づきにくい点ではありますが重要な点であると考えています。
本当に「スキルが無いスタッフ」と思う前に、まずは本件の内容も含めて見直してみてください。